てらこやの思い

子どもたちがのびのびと学び成長できる場づくりを

 本来、学ぶということは、それぞれの子どもの学びたいと思うことを学ぶことであり、全ての子どもに同じことを出来るようにすることではないと考えています。勿論、学びに興味関心を待つよう、学ぶ事は楽しいことなんだと実感できるよう働きかけも大切ですが、「できるようになる」ではなく、子ども達が一生懸命考えどう取り組んだかが重要だと思っています。
「てらこや」は少人数異学年が一つの部屋で「ごちゃまぜ」に勉強しています。そこには、せっかちな子もいれば、時間をかけてじっくり取り組みたい子もいます。授業についていくのが難しい子、逆に学校で教えてもらうことだけでは物足りない子がいたり、お母さんや兄弟と一緒なら来ることができる子もいます。
 学年を分けることなく、いろいろな子がいるということは、まわりと比べることがなくなり、ありのままの自分で学ぶことができています。比べる、評価するは本来の学びの妨げになると改めて感じています。
 「てらこや」では、小学校の算数、中学校の数学の復習・補習をしますが、必要に応じて数理パズルや思考する楽しさを味わえるような問題を出しています。開始当初は算数の学習につまづき、自己肯定感が下がってしまう子どもたちの力に少しでもなれればとの思いで始めました。活動を通じて全ての子どもたちに、自由にありのままで学べる場、その子の持っているものを評価するのではなく、そのままで価値があると受け入れてもらえる場所が必要だと感じ活動しています。

保護者(親)とのかかわりを大切に

 てらこやでは、子どもとの関係だけでなく、親との関わりも大切にしています。
 てらこやには、様々な学びの場の情報をキャッチして、自分のこどもに合った学習をさせたいという意識の高い家庭の子どももいます。一般の塾には行きたくないけど、てらこやなら楽しく通える子、体力、気力が不安で自分のペースで学びたい子、同学年では他の子と比べられて嫌だけど異学年だとのびのび学べるという子など、様々なタイプの子どもがいます。
 入会の際には、保護者と面談をして、「てらこや」は塾とは違う学びの場であることを理解してもらうようにしています。また保護者には、入会後も気になったことを共有するばかりではなく、ポジティブエピソード・・・子どもたちが一所懸命取り組んでいること、がんばったこと、楽しかったこと、てらこやに来て変化した様子なども、電話や SNSで伝えています。

社会で生きる力を養う

 社会情勢が変化し続けている中、生きにくい社会と感じている大人が多いと思います。人間関係が希薄になると、地域社会とのつながりを広げ、深め、豊かに生きることにイメージも持てないかもしれません。「てらこや」では学習だけではなく、子どもが社会でたくましく生きていけるよう、どうしたら自分の良さや努力を認めてもらえるかの「術」を伝えています。
 出来る出来ないではなく、その子なりに努力したことが伝われば理解してもらえる。本当は、比べられ評価されてばかりの学校や社会こそが変わらなければならないと思いますが、今、生きるための力をつけて欲しいと思っています。
 将来のために今があるのではなく、今の積み重ねの先に将来があり未来があります。

想いを打ち明け、気持ちの整理をすること

子どもと雑談をしていると、素の顔が見え隠れします。大切な話にも何気ない話にも耳を傾け、聴くようにしています。自分の話を誰かにゆっくり聴いてもらえる環境は全ての子どもに必要です。
 子どもたちの中には、親には心配かけたくないとか、理解されにくかった時など面倒なことにもなりかねないし、怒られることだってある…等で、心のうちを明かさない、明かせないこともあるようです。学校の先生には、成績に影響するかもしれないし、レッテルをはられる気がする等で、やはり、なんでも話せる対象にはなりにくいとも感じている子もいます。
 人が何かに葛藤したとき、誰かと共有したいと思うことがあります。伝える側が、自分のことを話しながら、起こっていることを整理し、話している相手に意見を求めることもありますが、自問自答しながら、解決策を見出すのです。てらこやは子どもたちにとっては先生でもない、親でもない、利害関係のない斜めの関係でありたいと思っています。

評価されない、子どもが安心できる時間を

現代社会は、可視化できるもの、点数化できるもの、生産性のあるものばかりに価値を見出そうとします。
学校も社会も与えられたことをこなせる子、教えられたことを再現できる子が優れていると勘違いしています。
「てらこや」や「こどもごはん」の活動を通して感じることはテストの点数や学習の評価など、可視化できるものばかりが成長ではないということです。
子どもたち自身が、居場所で仲間や支援者と共にやるべきことに気づき、それができるようになった時、子どもたちは喜びを感じ、自信を持ち、仲間と共にいることに幸せを感じます。私たちもそんな場に出会ったときには、子どもたちを、精一杯褒めて、自信を持ってもらいたい、自己肯定感を育みたいと心から思っています。

(子どもの居場所づくり課題解決ケースブックProblem Solving Casebook、横浜市、2020より)